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ECサイトはブランディングで変わる 老舗醸造メーカーのサイトリニューアル事例

ECサイトを立ち上げたものの、思うように売上が伸びない。商品の品質には自信があるのに、結局は価格で比較されてしまう。そんな悩みを抱えている企業は少なくありません。その原因は、サイトのデザインや機能ではなく、「ブランディング」にあるかもしれません。

この記事では、創業150年を超える老舗醸造メーカー・会津天宝醸造様のコーポレートサイト&ECサイトのリニューアルを事例に、ブランディングを軸にしたECサイト構築のプロセスをご紹介します。ECサイトの新規構築やリニューアルを検討されている企業のご担当者様にとって、実践的なヒントになれば幸いです。


ECサイトにブランディングが必要な理由

ECサイトと聞くと、まずデザインや決済機能、カートの使いやすさといった「機能面」に目が向きがちです。もちろんこれらは重要ですが、それだけでは他社との差別化は難しくなっています。多くの市場でコモディティ化が進む現在、商品の品質や価格といった「機能的価値」だけでは消費者に選ばれにくくなっています。実際、似たような商品がネット上にあふれる中で、お客様が最終的に「ここで買おう」と決める理由は、スペックの違いよりもブランドへの共感や信頼であるケースが増えています。 

つまり、ECサイトにとってのブランディングとは、「何を売るか」だけでなく「何を伝えるか」を設計すること。その企業ならではの哲学、歴史、地域性、ものづくりへの想いを、サイト全体を通じてお客様に届けることです。
この考え方を実際に形にしたのが、今回ご紹介する会津天宝醸造様のリニューアルプロジェクトです。


プロジェクト概要|会津天宝醸造様の場合

会津天宝醸造株式会社様は、1871年(明治4年)に創業し、福島県会津若松市に本社を構える老舗の醸造メーカーです。会津味噌を中心に、甘酒、漬物、調味料など幅広い発酵食品を製造・販売されています。約300年の歴史を持つ会津味噌の伝統を今に受け継ぎながら、「玄米オリザーノあまざけ」や「おでかけ前にたたかうあまざけ」といった現代のライフスタイルに合った商品開発にも積極的に取り組まれています。

リニューアルの背景と課題

会津天宝醸造様は既にコーポレートサイトとECサイト(オンラインショップ「一汁一菜亭」)を運用されていましたが、いくつかの課題を抱えていらっしゃいました。

コーポレートサイトの課題:BtoB向けの情報発信が不十分で、企業としてのブランド訴求も弱い状態でした。社内での更新・運用の効率にも改善の余地がありました。

ECサイトの課題:購入までの導線がわかりにくく、商品の魅力やストーリーが十分に伝わっていませんでした。「会津」という地域ブランドの価値もサイト上で活かしきれていない状態でした。

プロジェクトの範囲

今回のプロジェクトでは、ECサイトをリニューアルしました。フューチャーショップ(futureshop)をプラットフォームに採用し、ブランディング戦略の策定からサイト設計、コンテンツ企画まで一貫して担当しています。2022年7月にプロジェクトを開始し、2023年2月にリニューアルオープンしました。


ブランディングの設計|「何を売るか」の前に「何を伝えるか」

このプロジェクトで最も重要だったのは、サイトのデザインや機能に着手する前の段階、つ
まりブランディングの設計です。

機能的価値と情緒的価値を整理する

まず取り組んだのは、会津天宝醸造様の商品が持つ価値の整理です。味噌や甘酒は日本の食卓に広く浸透した商品であり、品質や原材料といった「機能的価値」だけでは他社との違いを伝えにくい側面があります。

そこで、機能的価値はしっかりと土台に据えつつ、その上に「情緒的価値」を重ねていくアプローチを取りました。会津天宝醸造様ならではの情緒的価値とは何か。それは、会津という土地の風土、300年にわたる醸造の歴史、そして日本の食文化の中で発酵食品が果たしてきた役割そのものです。

コンセプトの策定:「水が出会う会津」

会津天宝醸造様の強みを掘り下げていく中で、一つのコンセプトにたどり着きました。「水が出会う会津」というテーマです。

味噌も甘酒も、良い水なくしては生まれません。そして会津は、磐梯山をはじめとする山々からの雪解け水に恵まれた地域です。この土地の水と風土が育んだ醸造文化、そしてそこから広がる会津の食卓の豊かさ。こうしたストーリーをECサイト全体で伝えていくことを、プロジェクトの軸に据えました。

また、ブランドの世界観をより具体的にするために、会津天宝醸造様の商品だけでなく、会津の食
文化そのものに目を向けました。
飾りすぎないが味わい深い「会津の地味(じみ)な食」の魅力。会津塗の器や会津木綿といった伝統工芸品が、何気ない日常の食卓にもたらす彩り。こうした要素を、サイトのビジュアルやコンテンツに組み込むことで、「会津天宝の味噌を使うこと=会津の食文化を日常に取り入れること」という体験価値を設計しました。
ここで重要なのは、いきなりデザインに入るのではなく、まずこのコンセプトをクライアントと徹底的にすり合わせたことです。ブランディングの根っこがブレなければ、その後のデザインやコンテンツの判断基準が明確になります。


ECサイトへの落とし込み|世界観を購買体験に変える

コンセプトが固まったら、次はそれをECサイトの具体的な体験に落とし込むフェーズです。

季節感の演出

発酵食品と季節は切り離せない関係にあります。ECサイトでは、季節ごとに変わるメインビジュアルやおすすめ商品の切り替えを通じて、「旬」を感じられる設計にしました。冬のふきのとうみそ、季節のギフトセット、夏の甘酒といった季節商品をフィーチャーすることで、リピート訪問の動機を作るとともに、「会津の四季」という世界観を自然に伝えています。

商品の背景にある「物語」を語る

会津天宝醸造様の主力商品である甘酒シリーズには、それぞれ異なるストーリーがあります。
「玄米オリザーノあまざけ」は健康長寿を意識した方に。「おでかけ前にたたかうあまざけ」は免疫力を高めたい方に。「伝承会津あまざけ」は体を労わる暮らしを大切にする方に。
読みものコンテンツでは、これらの商品を「スペック」ではなく「使う人の暮らしの文脈」の中で紹介しています。健康診断の結果をきっかけに食生活を見直した方のエピソードや、毎日の甘酒習慣で肌の調子が変わった体験談など、リアルな生活者目線のストーリーを通じて、商品の価値を実感してもらう設計です。

こうした読みものコンテンツは、公開後も継続的に更新されることで、SEO上の資産にもなります。「甘酒 健康」「味噌 レシピ」「発酵食品 暮らし」といったキーワードからの流入を獲得し、新規顧客との接点を広げる役割も担っています。


ECサイトのブランディングで大切な3つのポイント

会津天宝醸造様の事例を通じて見えてきた、ECサイトのブランディングに重要な3つのポイントをまとめます。

1,コンセプト設計が先、デザインは後

ECサイトのリニューアルというと、すぐにデザインの話に入りがちですが、最も重要なのは「このサイトで何を伝えるか」というコンセプトの策定です。会津天宝醸造様の場合、「水が出会う会津」というコンセプトがあったからこそ、デザイン、写真、コンテンツのすべてに一貫性が生まれました。コンセプトなきデザインは、どれだけ美しくても「選ばれる理由」にはなりません。

2,商品スペックではなく「体験価値」を伝える

ECサイトに掲載する情報は、商品のスペックや価格だけでは不十分です。「この商品を使うと、どんな暮らしが手に入るのか」という体験価値を伝えることが、ブランディングの核心です。利用シーンの写真、季節感の演出、ショップ名に込めたメッセージなど、あらゆる要素を通じて体験価値を設計することで、お客様にとっての「ここで買う理由」を作ることができます。

3,コンテンツは継続資産になる

読みものコンテンツのように、ブランドの世界観を伝えるコンテンツは、一度作って終わりではなく、蓄積するほど価値が高まる資産です。SEOによる新規流入の獲得、リピーターの定着、ブランドへの理解の深化。これらはすべて、質の高いコンテンツを継続的に発信し続けることで得られる効果です。ECサイトのブランディングは「作って終わり」ではなく、「作ってからが本番」です。


まとめ

ECサイトの成果を左右するのは、カートの使いやすさやデザインの美しさだけではありません。「この企業から買いたい」「このブランドのファンになりたい」と思ってもらえるかどうか。その伴を握るのがブランディングです。
会津天宝醸造様のプロジェクトでは、ブランドの根っこにある価値を掘り下げるところからスタートし、コンセプト策定、サイト設計、コンテンツ企画までを一貫して行いました。その結果、商品を売るだけのECサイトではなく、会津の食文化と発酵の魅力を伝えるブランド体験の場としてのECサイトが実現しました。

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