知られていない活動を全国区にするPR戦略
認知度を上げる広報はなぜ難しいのか
──ニッチな活動が抱える課題

アダプティブサーフィンは、身体に障がいのある選手が、それぞれの特性に合わせてサーフィンに挑む競技です。「パラサーフィン」とも呼ばれ、立って乗る、膝立ち、座位、うつ伏せ、視覚障がいのクラスなどに分かれ、選手が自分に合ったスタイルで波に乗ります。
今回支援した「ジャパンオープン(Japan Open Adaptive Surfing Championship)」は、安定した波を生み出せる人工サーフィン施設・静波サーフスタジアム(静岡県牧之原市)を会場に、国内外のトップ選手が集う国際大会です。運営体制にも変化がありました。日本アダプティブサーフィン連盟(JASA)や選手チーム「Japan Adaptive Surf Team(JAST)」が担ってきた運営を、世界大会の経験を持つ選手たち自身が設立した「Adaptive Surfing Japan Open合同会社」が引き継ぎ、当事者の視点で主体的に運営する体制へ移行しました。
しかし、競技の魅力や運営の熱意があっても立ちはだかるのが「認知度の低さ」でした。福祉的な側面が強く、サーフィンファンの間でも知る人は限られます。そもそも競技の存在が知られていなければ、スポンサーも支援も集まりません。優れた取り組みであるほど、それが世に伝わらないもどかしさは大きくなります。これは、優れた商品やサービス、地域の取り組みを抱えながら「知られていない」ことに悩む多くの企業・団体に共通する課題でもあります。
プレスリリースの段階配信とは
──半年かけて接点を増やすPR戦略
認知度の低いイベントを広めるとき、多くの人がイメージするのは「大会直前に一度大きく発信する」手法でしょう。しかし弊社が採用したのは逆の考え方でした。
具体的には、大会前に4回、開催後に1回、合計5回のプレスリリースを約半年かけて段階的に配信する設計です。認知度が低くニッチなテーマほど、一度の大発信より、情報を小出しにして接点回数を増やすほうが効果的だからです。一度だけ大きく報じられても、ニッチな話題は記憶に残りにくく、すぐ忘れられてしまいます。半年かけて少しずつ届け続けることで興味を継続的に引きつけ、本番に向けて期待感を高めていく――これが段階配信の核心です。
配信の仕組みも戦略を支えます。プレスリリースは専用のPRプラットフォーム経由で、新聞・テレビ・ラジオなど登録メディアへ自動的に届きます。メディアは地域や専門分野で情報を選別し、ニュース性があれば独自取材やニュースサイトへの転載につながります。1回あたりの配信コストは比較的安価で、費用対効果の高い手法といえます。
プレスリリース配信の効果をデータで検証
──アクセス推移が示すもの
段階配信がどう機能したかは、配信ごとのアクセスデータに表れています。下のグラフは、4回分の配信について配信日を起点にアクセス数(PV)の推移を重ねたものです。

注目すべきは、配信のたびに鋭いピークが立ち上がる点です。配信から1~2日でアクセスが集中し、ゆるやかに収束する。この山が半年間繰り返されることで、世の中との接点が途切れず積み重なりました。配信期間全体では累計でおよそ2,450回の閲覧、116のサイトへの転載につながっています。
回ごとに見ると、最もアクセスが伸びたのは3回目で、800回を超える閲覧を集めました。情報の鮮度や企画の切り口がかみ合うと大きな反響につながります。また、配信を重ねるごとに転載サイトが着実に増え、4回目では4回中で最も多くのサイトに転載されました。最初は様子見だったメディアが、回を追うごとに「継続的に発信している信頼できる活動」と受け止めるようになり、転載の裾野が広がっていったと考えられます。継続的な発信が、メディアとの関係づくりにも効いていることがうかがえます。
メディア露出を最大化する企画力
──地方発の活動を全国に届ける方法
段階配信が土台なら、その上に乗る一回ごとの「企画の中身」が露出の大きさを左右します。同じ仕組みで配信しても、新鮮さやニュース性がなければメディアは取り上げません。メディア露出の成否は、突き詰めれば企画の質次第です。
弊社が重視したのは、配信して待つだけでなく、テレビ番組の編集担当者や既存のメディアネットワークへ直接アプローチし、番組の企画意図に合わせた情報を能動的に提供することでした。「この切り口なら、この番組で取り上げてもらえるのではないか」と仮説を立て、相手の求める形に情報を整えて届ける。この一手間が、地方発のイベントでも特集として扱われる可能性を大きく広げます。
実際、大会直前に配信した4回目の内容が大きく取り上げられ、NHKの取材につながりました。その模様は大会期間中に放送され、競技の存在を全国に届ける機会となったのです。安価な配信を起点に、企画力で大きなメディア露出を引き寄せた好例といえます。
スポンサー獲得につながる仕組み
──プレスリリースは「信頼の証明書」
段階的なPRの成果は、メディア露出だけにとどまりませんでした。運営にとって本質的に重要だったのは、スポンサー獲得への直結です。
情報が広まると、それを目にした企業からスポンサーシップの問い合わせが寄せられるようになりました。ここで大きな役割を果たしたのが、公式なプレスリリースが持つ「信頼性の担保」という機能です。登記された企業や団体が公式に発信した情報であるという事実は、それ自体が一つの信用の裏づけになります。継続的に情報発信している活動だという実績は、企業が支援を検討する判断材料になります。認知度の低い分野ほど「この団体は信頼できるのか」という不安がつきものですが、公的な形で発信を重ねた実績がそれを払拭するのです。
資金面では、クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」も活用されました。専門コンサルタントを外部パートナーとしてコーディネートし、手数料負担を抑えながら支援を募り、目標に向けた資金調達を進めています。なお運用主体はあくまで大会の運営側であり、弊社や外部コンサルタントは紹介・コーディネートを担う立場であった点を申し添えます。認知拡大が信頼の獲得を通じてスポンサーへつながる――この流れこそ、戦略的な広報がもたらす最大の価値です。
これからの展望
──持続可能な運営とPR体制の内製化
ジャパンオープンは今後さらに広がろうとしています。国内のコンテストから、オーストラリア・ハワイ・カリフォルニアなど海外の開催地と連携した国際ツアーの一部に組み込まれる構想も語られ、実現すれば海外からの参加選手は今以上の規模になると見込まれます。運営の予算規模も拡大していく可能性があります。
規模が大きくなれば大手広告代理店などの参画も想定されます。そうした局面に備え、運営側は企画書や提案資料を自前で作成できる体制づくりを進めています。提案の質を自前で高めることが、外部パートナーと対等に渡り合う土台になるからです。SNSやWebサイト運用の外部委託も選択肢に入りますが、まずはグッズ販売や年間を通じた継続的なイベント運営など、一過性で終わらない持続可能な仕組みづくりが今後の課題です。
まとめ:戦略的なプレスリリース活用が、ニッチを全国区に変える
認知度が低く、ニッチで、福祉的な側面が強い――。一見ハードルの高いテーマでも、戦略的に設計されたPRによって認知度を上げ、全国的な認知とスポンサー獲得を実現することは可能です。今回の事例が示したのは、「半年かけて接点を増やすプレスリリースの段階配信」「メディアに響く企画力」「信頼性を担保するプレスリリース」という3要素を組み合わせる力でした。
自社や自団体の優れた取り組みが、まだ十分に世の中に知られていない。そう感じている企業・団体の担当者にとって、本記事の考え方が広報を見直すヒントになれば幸いです。大切なのは、一度きりの発信に頼らず、戦略的な設計のもとで継続的に情報を届けていく姿勢です。弊社・株式会社シースリー・ブレーンでは、プレスリリースの配信設計から企画立案、効果検証まで、企業・団体の「伝える」課題に伴走しています。
群馬・北関東発の「知られていない」を、全国区に

株式会社シースリー・ブレーンは、群馬県前橋市を拠点に、東京・大阪にも拠点を持つWeb制作・広告運用・ブランディングの会社です。
Webサイト制作からパンフレットなどのクリエイティブ制作、プレスリリースの配信設計・企画立案、効果検証まで――「伝える」ために必要な機能を一気通貫でご提供しています。本記事でご紹介したアダプティブサーフィン大会の事例のように、複数の制作物を一つの導線として束ね、認知度の低いテーマでも全国的な認知へと広げていく伴走型の支援を得意としています。
「優れた取り組みなのに、まだ十分に知られていない」「一度発信してみたが、成果につながらなかった」――そんな課題をお持ちでしたら、ぜひ一度ご相談ください。